Foxit eSlick Readerの所感

eSlickのイメージ

Foxit社の電子ブックリーダーeSlickの日本語の情報がほとんどない、というか本国でも全然話題になっていないようなので買ったついでに紹介してみます。所感と簡単な使い方、公式ページの仕様の引き写しです。初めて買ったE Inkデバイスなので他製品との比較はできません。ごめんなさい。

製品について

Foxit eSlick Readerは、2009年3月に発売されたE Inkの4階調電子ペーパーを内蔵したごくシンプルな電子ブックリーダーです。Kindle(Amazon)やLIBRIe(ソニー)のようなネットとの接続機能はなく、単純にPDFとテキストの表示ができるだけです。MP3再生機能もついていますが、オマケ程度の機能です。売りは259.99ドル+日本向け送料29ドルという価格です。が、後述の作りの甘さからするとKindle2は360ドル、RPS-505は300ドルくらいらしいのであまりアドバンテージはないかも知れません。私は予約キャンペーン中に購入したので本体229.5ドル+送料25ドルで254.5ドルでした。

本体は厚さ1cmくらいのB6システム手帖サイズで、画面がほぼ文庫本の大きさです。重さは180gで普通の文庫本程度なのですが、比重が大きいことによる錯覚なのか、紙の本よりも重く感じます。ページを送るのに本体の下端を持つ必要があるからかも知れません。表面は梨地のプラスチックで流行りのツルツルピカピカより手に馴染みます。

E Inkの画面は他社製品と同じものですが、Kindle2が16階調なのに比べると廉価版という感じがします。文庫本くらいの文字サイズで表示するには十分ですが、細かい字や図を表示するには厳しく、解像度はFAXくらいの感覚です。計算すると170DPIくらいです。ページ遷移もそれなりのスピードで、1ページめくるのに1秒近くかかります。また、個体差なのかE Inkの仕様なのか判りませんがページをめくると画面にゴミが残ります。ちょうど紙媒体で裏写りしているような、うっすらと前のページが残る感じです。小説を読む分にはそれほど気になりませんが、絵や図を表示するには厳しいです。画面をリフレッシュする機能がないのが惜しまれます。

残像のイメージ1 残像のイメージ2
左の写真から右の写真にページ移動した例です。左端のバーが薄く残っています。このゴミは徐々に消えたりせず、ページ遷移するまで画面に残ります。

操作は画面右下にあるカーソルボタンと、本体サイドにあるボタンで行います。ファイルの選択やページ送りはカーソルボタンを使います。カーソルキーの中心には選択ボタンもあります。本体上端に[電源]ボタン、本体左端に[音声再生]、[メニュー]、[戻る]、[削除]の各ボタン、右端に[拡大]、[縮小]ボタンがあります。PDFの表示中にメニューボタンを押すとメニューが開き、[指定ページ移動]、[拡大縮小]、[フォントサイズ指定]、[ブックマーク]、[縦横回転]、[Reflowモード]が指定できます。[フォントサイズ指定]と[ブックマーク]はテキストファイル表示中しか使えません。[Reflowモード]はPDFでフォントサイズを変えて再レイアウトしてくれる機能らしいのですが、日本語PDFだとうまく動かないようです。

左端のイメージ 右端のイメージ
左右の端にあるボタンです。小さくてクリック感が固く、押しにくいです。誤動作の心配は不要かも知れません。

ファイルを検索する機能がないので、資料を格納するような使い方には向いていません。PDFファイルの最後に開いた位置は覚えていてくれて、次回は同じページから表示されます。画面の拡大、縮小は一応できますが細かいコントロールができず、応答速度も遅いのでeSlick用に調整したPDFを作成するとストレスが溜まらずに済みます。

充電はUSB端子から行います。USBケーブルと別にコンセントに挿せるアダプターが付属しているのでPCがなくても充電可能です。FAQページには「状況によるが8000ページの表示か、6〜7時間の音楽再生が可能。待機状態なら20日くらい。ページを移動しなければ電力は消費しない。」との記述があります。

バッテリーのイメージ1 バッテリーは裏面のネジ止めされた蓋の内側に格納されています。HS03456 1000mAhと型番と定格らしき記載がありますが、このバッテリーが入手交換可能かどうか判りません。左のゴム製カバーの中にはUSBのminiB端子とオーディオ端子があります。

音声を再生するにはSDカードにMP3ファイルを入れて、[音声]ボタンをクリックします。ファイルを選ぶと再生が始まります。音楽ファイル一覧で[メニュー]をクリックすると演奏順序を[ループ]、[ランダム再生]、[1曲だけ繰り返し]から選択できます。音声を聞きながらのPDF表示も可能です。オーディオ端子がゴム製カバーの中に隠れているので、使う時カバーがカパカパして結構不安です。あまり使う機能だとは思っていないのかも知れません。

オーディオ用付属品のイメージ 電源ケーブルのイメージ
オーディオ用の付属品と電源ケーブルです。オーディオ端子は2mmのステレオジャックなので、一般的な3.5mmジャックに変換するためのケーブルも付属しています。電源アダプターはプラグの部分が別パーツになっていて90度回転させて付け直すことができるギミック付きです。付属のCDにはFoxit PDF Creatorの体験版とかが入っています。

購入方法

アメリカで使えるクレジットカード(MasterとかVISAとか)とメールアドレスがあればFoxitのサイトで注文できます。私が2008年12月に予約した時には画面がいい加減でeSlickの色も指定できずメールで補足のやり取りが必要だったのですが、2009年4月の時点では常識的な画面で注文できるようです。サイトの案内には日本に7日で届くとありますが、私のは半月くらいかかりました。

日本語対応

海外製電子ブックリーダーの常だと思いますが、日本語のPDFはフォントが埋め込まれていれば表示可能です。テキスト表示、ファイル名、フォルダ名では英数字以外が表示されません。特にファイル名に日本語が使えないのは実用上困る点です。ただ名前の日本語部分が表示されないだけで、ファイル自体は操作できるのが救いです。

Windows環境があれば、PDFはテキストファイルを元にプリンタに出力する青Pというフリーソフトと、クセロPDF2というプリンタ出力の代わりにPDFファイルを作成するフリーソフトを組み合わせることで無料で作成できます。青Pは3種類くらいありますがプリンタに出力するタイプを使います。リンク先にある両ソフトをインストールし、青PでプリンタをクセロPDF2に設定して出力します。

青P(V1.01+)とクセロPDF2(V2.2.3)を使った場合の私の作成手順は以下の通りです。縦書きの文庫サイズを想定して調整しています。
  1. 青Pを起動して、出力したいテキストファイルを青Pにドラッグします。
  2. 本文を"@MS 明朝"の6ptに、ルビを"@MS ゴシック"の3ptに、行間を6ptにそれぞれ変更します。余白は全部5mmに変更します。ページ番号は「無し」に変更します。
    青P画面イメージ
  3. 印刷ボタンをクリックしてプリンタ名をクセロPDF2に変更します。
  4. プロパティボタンをクリックして用紙サイズを「カスタムサイズ」に変更し、編集ボタンをクリックします。
  5. カスタム用紙の編集ダイアログで追加をクリック。カスタム用紙サイズダイアログで幅90mm、高さ122mmと入力し、eSlickとでも名前をつけてOKで閉じます。カスタム用紙の編集ダイアログもOKで閉じます。
  6. カスタムサイズのプルダウンから先ほどつけた名前を選びます。
  7. PDF設定タブを開き、ジョブオプションを画質優先にして編集ボタンをクリックします。
  8. フォントタブを開き、「全てのフォントを埋め込む」をチェックします(←これが重要です)。
  9. OKでダイアログを全て閉じます。
  10. 印刷ダイアログをOKで閉じたところで「名前をつけて保存」ダイアログが出るので、英数字のファイル名をつけて保存します。
  11. しばらく待って「終了しました」というダイアログが出たらOKをクリックします。PDFファイルが表示されるので出力結果を確認します。
  12. 出来たPDFファイルをSDカード経由でeSlickに読ませて確認します。

仕様

画面 6インチ E Ink® Vizplex screen, 600x800ピクセル, 4階調グレースケール
大きさ 縦188mm, 横118mm, 厚さ9.2mm
重さ 180g(バッテリー込み)
カラーバリエーション 黒, 灰(濃いグレイ), 白(薄いグレイ)
インタフェイス USB2.0
OS Embedded Linux
対応表示フォーマット PDF, テキスト, 印刷可能な文書であればPDFに変換することで利用可能 (*1)
対応音声フォーマット MP3
内蔵メモリ 128MB
外部メモリ SDカード(2GB同梱, 4GBまで対応)
拡張性 SDカードスロット
規格・認証 FCC
操作方法 ボタン:"ON/OFF", "Up ", "Down", "Right ", "Left", "Enter ", "Delete", "Menu", "Music"
電源プラグ Euro 2Pin, UK 3Pin, US 2Pin (*2)
電源 リチウムバッテリー
プロセッサー Samsung® S3C2440 ARM 400MHz
(訳注)
*1 Foxitの説明のままに書いていますが、日本語だとうまく変換できない文書があります。
*2 ウチのは日本で使えるプラグが同梱されていました。

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